自分の性癖が何なのかを問う苦しい旅 ~ レザーボンデージに出会うまで
先日のこと。以前読んでいた興味深い本を読み直していたんだ。
「31歳で天才になった男 ~ サヴァンと共感覚の謎に迫る実話」という本。
とても珍しい「共感覚」と「後天性サヴァン症候群」を持つ男性の実話。
それまではごく普通の青年だった彼。それが31才のある日、強盗から暴行を受けて脳に損傷を受ける。
その結果全く人が変わったようになってしまう。そして様々な不思議な感覚の変化が現れた。
中でも、すべてのものが、幾何学的な図形として見えるようになるという状態になってしまうのには本人も大きな衝撃を受ける。
自宅に引きこもり状態になり、自分に何が起きているのか、混乱しながらも、彼は必死になってネットでその状態が何なのかを探していくんだ。
その結果、ようやく「共感覚」と「サヴァン症候群」という二つの答を見つけ、初めて「安堵」できたという。
その部分まで読んだ時に、「あっ!」と思った〝Y〟。
そうだった!久しぶりに思い出した!!
SMの世界で、同じように自分は何なのかと探し回った時代があったことを。
もちろん、この著者のような劇的な体験ではないけれど……。
若い頃、一枚の写真に釘付けになったこと、このブログにも以前、書いたよね。革の手枷、そして、乳房枷や胴枷を施された女性が拘束されている。その姿に激しい衝撃を受けた。
これだ!これこそがまさに自分が求めていた世界だ!
それまでも革を身につけた女性に激しく惹かれていて身体が思わず反応してしまう自分。なんだか恥ずかしくて他人にそれを打ち明けることなんて出来なかったし、当時の雑誌などでも、ほとんどそうした嗜好に関する情報は目にすることがなかった。
でも、これって一体何?
当時はネットもない時代、自分で探せる範囲も狭い。それでも時間をかけていろいろと探し回ったよ。
答を見つけるまでって、本当に不安だった。
自分っておかしいんじゃないかって。
一時は真剣に悩んだんだよ。
答がないって、本当に苦しく感じるもの。
普通の健全な性欲もあるけれど、それを上回るこの嗜好。
「変態」と呼べばそれまでだけど、きっと、きっと何かしら、そういう分野があるんじゃないかって。
これが「縄」だったら、すでに大きなジャンルとしてSMの世界に存在することは知っていてすぐに納得できただろうけれど、革となると……。
そして、数年かけて探した結果、その写真の元となる映画が判明し、ついに見つけた世界。それが「レザーボンデージ」。
その分野が確実に存在し、少数ながらも日本に愛好者がいるということを知ったとき、心から「安堵」できた。もちろん、もともとは欧米から来たものだけど。
そう、カテゴリーが存在し、自分もそこに分類できると判った瞬間に、自分が「肯定」されたような、そんな大きな安心感を得たんだ。
だって、それまでは自分って、おかしいんじゃないかと、不安で、不安で、仕方なかったから。
さらに、時代が変化するタイミングも良かったのか、それ以降、様々な関連する書籍が出始めた。さらに、遡って自分自身の子ども時代からのダイビングギアやラバーへの嗜好というのも、世界中に同じような愛好者がいることがわかった。
ただ、その数は他のメジャーな性癖に比べるとさほど多くないようだった。だからこそ、なかなか見つからなかったわけだよね。(繰り返すけどインターネットなんてない時代だから!)
性的少数者という意味ではLGBTQと似た部分もあるかもしれない。
自分が何者なのかという旅、それは苦しくて長い旅だった。
その回答を得たということは、人生の中で大きな大きなターニングポイントだったような気がするよ。
自分の性衝動や性嗜好に、初めて自信を持つことができた。
そして今ではそれを分かち合ってくれる〝ゆえ〟という大切なパートナーがいる。
そして、今、自分自身がSNS等でレザーボンデージやラバーなどの嗜好を積極的に紹介しているのは、同じ嗜好を持つ若い方々に、自分の若い頃の同じ苦しみを持って欲しくないからということもあるよ。