〝ゆえ〟の小窓~52 〝ゆえ〟、迷子になる
これからは迷子にならないように
しっかりと心にもリードをつなごう!
今回の「小窓」は少し前のXでのポスト(旧ツイート)を思い出す人もいるかもしれないね。
そう、ご主人様が〝ゆえ〟としばらく連絡が取れなくなったときのお話。
********************
少し前にゆえは迷子になりました。
それはほんの些細な事がきっかけだったのです。
雨風が強い日に、傘を差しながらご主人様の横を歩いていました。
東京は悪天候な日でもお外を歩く人が多いなぁ…
ご主人様の背中、どんどん人の波にのまれていくなぁ…
と、ぼんやりしていたら、自分自身が雑踏に消えていくような感覚に陥ってしまいました。
さらに突然、小さい頃の記憶に引きずり込まれてしまい…
大人と一緒のお出掛け。
幼少期のゆえを気に留めず、街中や店内を自分達のペースで歩くので、出掛けるたびに知らない大人の親切心に救われ、大人達からは叱責されていたんだったなぁ。
ご主人様は、いつの間にか随分後ろにいるゆえに気付いてくださり、そして戻ってきてくださいました。
物理的には迷子では無いのですが、どうやら心の迷子になってしまい…
ご主人様は、本当は、奴隷が道で迷子なんて迷惑と思っていらっしゃるかも……
鈍臭いのに、ご主人様の横を歩くなんてやっぱりオカシイかも…
雑踏に溶け込む私が、お側にいる意味ってあるのかな…
このところ出てこなかったネガティブな気持ちに支配されて、薄ら笑いの張り付いた表情で過ごしていました。
帰宅してからも、ネガティブはムクムクと膨らんでいきました。
まず、ご主人様へメールを打とうとすると、変換を間違えてばかりになりました。
あら?何でかしら?
早くきちんとしたメールを作らないと…
焦れば焦るほど頭も画面も真っ白に…
とうとう数日後には、『おやすみなさい』も『おはようございます』も送れなくなりました。
これは奴隷として大事件。
そう、契約違反です。
違反しているという自覚はあるのに、スマホを持つと指が固まるのです。
なんて悪循環。
ご主人様からのメールは、朝晩きちんと届くのに…
もう、スマホを持とうとすると手が汗まみれで、滑って床に落としてしまうまでになりました。
ご主人様へお電話なんて、もっと出来ませんでした。
数日間、ご主人様へ全く連絡をしないで日々の仕事を淡々とこなしていると、ご主人様とのお時間は幻だったのかしら?と思えるくらい、日常とかけ離れていたんだなぁとしみじみ思えました。
でも、このままずっと連絡しないのは良くない。絶対に良くない。
せめて【生きてます】と一言は言わないと…と思い始めました。
なによりも謝らないと…
うう…緊張する
あやまるって、どうすれば【謝る】になるのかしら
うう…汗が半端ない
お、お、お電話しないと。
逃げたい気持ち全開なのに受話器をタップ。
うう…画面が怖くて見られない…
数日?数週間?ぶりに画面越しにご主人様が現れると、ご主人様はなんだか、とてもやつれていらっしゃるご様子でした。
消え入るように『ご連絡せずにいてごめんなさい。生きています』を口に出したら
ご主人様は大きな溜息と共に『良かった』と仰ってくださいました。
えっ?
怒鳴られないの?
嫌な顔されないの??
ハテナマークが沢山出ましたが、ご主人様はお電話中、終始怒らずに今回の原因やお互いの心情を話し合える場にしてくださいました。
自分の行動を受け止めて、分かってくれる存在(ご主人様)があることの幸せに気付いたような気がする…出来事でした。
人間の感情についてよくわからないので、目下勉強中の奴隷です。
おしまい
********************
これから心の手綱もしっかりと握って離さないようにしなければ……、と思うご主人様だよ。